石持浅海『罪人よやすらかに眠れ』レビュー・感想。解かれることのないミステリーを秘めた作品。(ネタバレ小)

time 2015/12/26 公開

time 2015/12/27 更新

1,897 PV

石持浅海の『罪人よやすらかに眠れ』のレビューです。

罪人よやすらかに眠れ

「全く新しい館ミステリ」と触れ込みにある通り、確かに新しい館小説です。

ただし、密室物推理ではなく、日常推理に近いかと思います。

とある「業」を抱えた人だけがその館に訪れることができ、それを謎の美少年、北良氏が解き明かすというのが基本的なスタイルで、各話は「業」を抱えた人びとの一人称によって語られます。

一人称によって語られるのですが、彼らが心のうちに秘めていた真実が探偵役の北良氏によって明らかとなるため、叙述トリック的な要素も少し含んでいます。

6編から成り立っており、一つ一つがパターン化されていることもあるため、短編ストレスを感じずに読むことができます。 まあ結末はどれも重いのですが……汗

では、6編それぞれの概要と感想とを述べたうえで、総括して参りたいと思います。

各話概要と感想(ネタバレ無)

さいしょの客 友人と、その恋人

概要:酒に潰れた友人を介抱していた主人公が、呼びつけた友人の恋人と3人が辿り着いた館。

感想:掴みは十分です。

2人目の客 はじめての一人旅

概要:叔母の家に行くつもりが館に迷い込んだ小さなお客さん。

感想:小説ならではの黙示的なルールをうまく使ったお話でした。

3人目の客 徘徊と彷徨

概要:何かから逃げるようにしている主人公が迷い込んだ先にあった館。

感想:言葉尻から違和感を拡張していき推理に結びつける話。やや強引ながら論理に無理はなく面白かったです。

4人目の客 懐かしい友だち

概要:突然旧友を思い出し、自分でも気づかず慟哭していた女性が館で介抱を受ける。

感想:何気ない一言から始まる過ち。これもやや無理がある気もするが惹きつける力があります。

5人目の客 待ち人来たらず

概要:子連れの彼女が待ち合わせに表れず、子供だけが表れるという謎の事態。

感想:事の始まりから逆算して考えるとロジックが繋がるところに、流石という感想を持ちました。

さいごの客 今度こそ、さよなら

概要:よさこい祭りで、大量殺人被害を受けたグループにいた女性の証言から、真実を見つける話。

感想:会話だけで事実が壮大に展開。若干話が極端すぎる傾向もありましたが、最後の女性の聡明な切り返しがなかなか小気味良かったです。

違和感について(ネタバレ?)

上記のように、一つ一つを呼んでいくと、比較的ライトな推理モノのように思えますが、実際のところは、本書自体に、いくつかの違和感があります。

まず、『罪人よやすらかに眠れ』というタイトルです。

上記の短編集の内容からすると、『業をもつ館』(適当ですが)など、館主体のほうがまだふさわしいながら、どうして『罪人よやすらかに眠れ』つまり、「罪人は死ね」というタイトルにする必要があったのか、不思議でなりません。

次に、もくじ。

普通なら、第1話~第6話 だったり、1人目の客~6人目の客 としてもいいところ、「さいしょの客」「さいごの客」としています。

本当に館に来た「最初の客」や「最後の客」ではないことは、文脈で分かりますが、すくなくともこの小説はもう、続編がないということも示唆しています。

つまり謎はこの小説に全て語られている、ということなのです。

最後に、探偵役の北良の存在。

すべての鍵を解く北良は、館に住まう家族ではなく、居候的な存在(つまり”業をもつ”他人)です。何らかの業を抱えている人が館を訪れ、謎が解かれたら出て行かなければならない、そんなルールの中で、彼自身の業にまつわる謎は最後まで解き明かされることはありません。

しかし、最後のストーリー「今度こそ、さよなら」での、館を訪れた女性の、北良に対する切り返しについての、北良自身のコメントもかなり含みがあります。

「藤森さんは、優れた頭脳を持っていましたね。 でも、一歩踏み込みが足りなかった。だから、思いつきの結論に飛びついてしまった」(P.203)

このセリフはもはや事件と北良氏が表面上ではなく、奥深いところでつながっていることを示唆しているようです。

 

おもに上記3つの要素から考えると、導き出される結論が存在します。

それは何か、というのは本書をお読みになって探求されるのが一番おもしろいでしょう。

結びに

私はこの方の作品は「月の扉」を読んだことがあるのですが、びっくりするほど内容に対する記憶が存在しません。

一方でこの作品はなかなか読み返し甲斐があり、記憶に残る作品になることと私は思います。


罪人よやすらかに眠れ
石持 浅海
KADOKAWA/角川書店 (2015-12-02)
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K.

  • 映画評論・書籍評論・ニュース分析など、考察系記事などを良く書きます。心理療法も分野なので、たまに謎の音声を公開することも。

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