湊かなえ『ユートピア』概要・感想。「良くわからない作品は支離滅裂な作品より恐ろしい」

今回は湊かなえさんの『ユートピア』のご紹介です。

「善意は悪意より恐ろしい」これが本作のキャッチコピーとされています。

ユートピア

概要

海辺の美しい街「鼻崎町」で出会った女性たちによって展開されるストーリー。

仏具屋の妻である堂場菜々子の娘久美香は交通事故で足が不自由になったが、友達想いである相葉光稀の娘、彩也子の作文がきっかけとなり、基金を設立。外から越してきた陶芸家星川すみれが主となり、翼をかたどった陶器「クララの翼」を広く販売することに。

その中で起こる様々な嫉妬や羨望などの泥々とした思いの交差、5年前の殺人事件、誘拐事件など重苦しい世界が背景にありながら、とある真実をもとに、話が収束してゆく。

というのが概要です。

これだけでも思惑の交差が甚だしいのがわかりますね。なにしろ足を悪くした娘と「クララの翼」を作る人が全くの別人なんですから、すでに話のもつれ具合が見えてきそうです。

ただまあなんというか、純粋にミステリーを楽しみたい人向けではないですね。

極論を言えば作品内で誰も人は死なず、登場人物らの閉塞感マックスの感情の吐露が続く、パッと気持ちの冴えない作品だなという感じでした。

登場人物の名前がややこしい

本書の登場人物は名前もキャラ性向も似たり寄ったりで、誰が誰か区別するのが難しいです。

足を悪くしている娘が久美香、そのお友達が彩也子、とご丁寧に漢字三文字で整えている。その母がそれぞれ菜々子光稀ですから、親子関係でも名前の使い方に統一感がありません。

あと、相葉光稀 を「こうき」って読んで男の人だな…と思ったらもうややこしい。それを防ぐために登場人物解説があるんですが、どうせならフリガナを振ったらどうなんだろうなと正直思います。

こういうのって感想としては邪道なんですかね…… そういう不親切さって別に誰も気にならないんでしょうか。

人の妬み嫉みってそこまで激しいのか

仮にも人の不幸を支えようとする行為について、掲示板では四方八方で批判の的に晒されている、という状況ですが、今ではあまりそういった「学校裏サイト」のような小コミュニティの掲示板は時代遅れで、今やほとんど機能していないのではないかと思います。

クララの翼」という名前の付け方からしてみても、久美香が何故歩けないかの原因が推察できるようなものですが(作中ではメンバーも後からそれに気づいた、としていますが)、それにしても、外部の人間らは、そこまで善行をいたぶるものなのか、他人にそこまで執念を燃やし尽くせるものなのか、その過剰性に疑問を感じます。

仮にそれほどまでに人間の嫉妬が烈しいのであれば、『人生の楽園』に出てる人なんて、もはや街にいられたもんじゃあないですね。

人間感情の負の部分を引き出しすぎて、逆に不自然に思えます。

オチは

一方本作のオチは考えようによってはなかなか深いものではあります。本書を覆う謎も、ゆるやかに全て解明してくれるのは流石といったところです。

タイトルと絡めて本作を考えると、「ユートピア」の在り処は一体どこにあるのか、哲学的にさえなれることでしょう。

筆者の巧さがどこにあるかというと、気持ちが沈むばかりのストーリーの多重層の中で消去法的に見えてくる希望を演出するところにあるのではないかと思います。

結びに

もともと湊かなえさんの作品は男女によって好みがよく分かれるように思います。私は『告白』『少女』『夜行観覧車』と初期作品しか読んでいません。

「イヤミス」(嫌な気持ちになるミステリ)と語られる彼女の作品ですが、個人的にはそこまでのめり込める分野ではないようです。

しかし、「ユートピア」とはどこにあるのか? をより現実路線の思考で考えてゆくのであれば、この本が一つの道標になるような、そんな気もします。


ユートピア

ユートピア

posted with amazlet at 16.01.03
湊 かなえ
集英社
売り上げランキング: 2,682

参考になりましたら
いいね!お願いします


メディア

【やれやれ】村上春樹さんの小説、下品図書に認定される/香港【僕は射精した】
1: サイカイへのショートカット ★ 2018/07/20(金) 19:51:42.97 ID:CAP_USER9 香港、村上さん小説「下品図書」 18歳未満に販売禁止 2018/7/20 19:32  7/20 19:34updated c一般社団法人共同通信社 https://this.kiji.is/392982487016522849 警告ステッカー(下)が貼られた村上春樹さんの小説「騎士団長殺し」=20日、香港(共同) https://nordot-res.cloudinary.com/t_size_l/ch/images/392987994053756001/origin_1.jpg 【香港共同】香港で出版物などの審査を行う「淫猥物品審裁処」は20日までに、 村上春樹さんの長編小説「騎士団長殺し」に性的な表現があるなどとして「下品図書」と認定、18歳未満への販売を禁止した。同日付の香港各紙が伝えた。 香港には村上ファンが多く、市民からは「世界的な小説に対し、ばかげた決定だ」と批判の声が上がっている。 香港では18日から約100万

続きを読む

【趣味】読書を趣味にして3年ほど経ったんだが…
【文豪】夏目漱石「独リボツチデ淋イヨ」 英留学中のはがきを100年ぶり発見(´・ω・`)
【小説】女の書く小説で面白いやつないよな
【セメント樽の中の手紙】また最後まで読んでしまった〈コピペ保存〉

「本の感想」記事をもっと見る

本の感想 人気記事

湊かなえ『ユートピア』概要・感想。「良くわからない作品は支離滅裂な作品より恐ろしい」
住野よる『また、同じ夢を見ていた』感想。キミスイよりも好きです。
【読書感想】住野よる『かくしごと』の未読了時の感想(ファン注意)
【読書感想】住野よる『よるのばけもの』の感想。異色的王道作品
河野裕『いなくなれ、群青』感想。何を捨て、何に捨てられたのだろうか
【名文集】なろう小説にありがちな失敗wwwwwwwwww
【小説】彡(゚)(゚)「ハルヒの冒頭は文学史に残るレベルだよな」 (まとめ)
君の膵臓をたべたい(住野よる著)感想(若干ネタバレ有)
ミッキーマウスの憂鬱(松岡圭祐著)の感想。
『王とサーカス』感想・レビュー。最後まで目が離せない極上のミステリー。