春の包帯少女(全4巻)佐藤ミト 著 を読んだ感想について。

著者の佐藤ミト先生は、今作がデビュー作のようです。
最新作である『流れ星に願うほど僕らは素直じゃない』(第1巻)の紹介はこちらです。

顔に巻かれた包帯と、その長い髪が八重の潮風に靡く。
力なく下げた左手に反し、差し出す右手は力強い。
表情は泣いているようにも見えるし、笑っているようにも見える。
喜怒哀楽を一枚の絵にしたような、そんな1巻の表紙。非常に印象深いです。

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概要

一言でいうと、「サスペンス風恋愛青春漫画」です。

主人公である夜桜ハルと星見ナツが暮らす街では、連続放火事件が発生していた。
じつは、ハルには物を発火させる力があった。そのせいで、ナツに大火傷を負わせてしまうことになる。
放火魔の嫌疑をかけられるハル。しかしその疑惑は、火傷から回復したナツの偽証により払拭される。

そんななか、満月アキという新たな転校生がやってくる。放火事件で母親を失った過去を持つアキは、今回の放火魔の正体を突き止めようとする。

アキは放火魔を突き止められるのか。そしてハルとナツの恋の行方は如何に!?

・・・・・・といった感じです。

初回特典

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3巻と4巻には描き下ろしのポストカードがついてきました(どちらもメロンブックス)。

感想

師匠譲りの画力

著者である佐藤ミト先生の師匠は、あの「交響詩篇エウレカセブン」や、「デッドマン・ワンダーランド」のコミカライズを手がけた、近藤一馬・片岡人生の両先生だそうです(2巻帯より)。
漫画的な魅せる絵を描く、という点においてはまさに師匠譲りと言えるでしょう。

冒頭に申したとおり表紙からして既に素晴らしいですが、素晴らしいのは表紙だけではありません。
1巻の時点で既に新人とは思えないほど上手い絵だと思いました。
そして今回改めて1巻と最終巻を比べてみれば、画力の上達具合がはっきりとわかりました。
リアルタイムで追いかけていると、なかなか気づきませんでしたが、しっかりと自分の絵というものを持てたようです。

一方、回想シーンの多用が気になった。

その反面、説明力というのか、読者に対して「この描写にはこういう意味がある」ということを伝える力は、未熟であると感じました。漫画としての説得力、という感じでしょうか。読者を引きこませる力がまだ不十分なように感じました。

この漫画の最大の問題点は、小刻みに回想を入れてしまったことであると思います。
あまりに多い回想シーンに、「今描写されているこの回想シーンは一体いつの話なのか?」と混乱してしまい、物語に十分入り込むことができませんでした。

話の流れに沿っていない回想シーン

例えばですが、あなたが大切に思っている人(仮にAさんとします)を傷つけられて、その犯人を捜しているとします。
そしてようやく、その犯人を見つけ出しました。
「あなたがやったのか?」とあなたはその犯人に問いかけます。
すると犯人は、「俺が恋人のBと出会ったのは丁度一年前のこと……」と、全く関係のないBの馴れ初めについて語り始めるのです。

これっておかしいですよね。さっさと本題に入れよ!って私なら声を上げてしまいそうです。

そうなんです。これがこの漫画に見られるパターンです。

脈絡のない(ように思える)回想が始まるけど、登場人物はあまり突っ込まない。
読者も「なんでやねん!」とは思うが、いかんせん話が進んでしまっているので、読み進めざるを得ない。

だから結果として、引き込まれないんです。

いっそ時系列に分けたほうが良かったのでは!?

この作品では、回想が重要な意味を持つので、省略できないのは、仕方のないことです。
しかしそれならば、本編と過去編に分ければ話がスッキリしたのではないかと感じます。
話が現在と過去を行ったり来たりしているせいで、読者を置いてけぼりにしてしまっているのは勿体ないと感じました。

例えば、アキが「人の心の声が分かる」能力をいつ手に入れたのか、時系列がややこしくて、本当に悩んでしまいました。

そもそも、回想シーンで事実が発覚する、というのは、ミステリーにおいてはルール違反なので、こういったジャンルにおいて多用することは、あまり評価することはできないでしょう。

ただまあ、新人ならではの悩みかも?

一方で新人であり、人気次第で打ち切りの可能性がある以上、過去編で伏線を張って本編でそれを回収するという、そんな悠長なことはやっていられない、という状況も想像できるため、一概に責めることもできない面はあります。

ジャンルをはっきりするべきだったか。

以上のことから、純粋なサスペンス漫画として見ると、若干厳しい評価になってしまうのはやむを得ないです。

しかし、あくまでこれは、恋愛漫画なんだ、として見れば話は変わります。
夜桜ハルと星見ナツの恋物語として見れば、です。

あくまで恋愛コミックとして見れば、なるほど色んな要素(アキも含め)は二人の物語の引き立て役にすぎないのか、ということが分かります。

したがって、恋愛サスペンス、と言った形で、中途半端に描き上げるのではなく、

恋愛か、サスペンスか、シリアスか、ギャグか、

ジャンルおよびスタンスをはっきりするべきだったと、私はそう思います。
(シリアスとギャグも配分がビミョーでした。)

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3巻の回想シーン。中学生時代のナツが超可愛いです。ハルとナツは中学時代から既に夫婦みたいですね。

画力十分で次回作の期待は高まる。

批判めいた書き方になってしまいましたが、画力があると、やはり内容の粗が目立ってしまうので、致し方ないところです。
佐藤ミト先生は、今後、話の転がし方さえ身に着けることが出来れば、更に上の作品を作ることが出来るようになると思います。
次回作に、否応なしに期待が高まってしまうというものです。

補足:2巻の読み切り「妄想ミーツガール」が面白い!

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これは2巻に収録されている読み切りの「妄想ミーツガール」です。
話のテンポがよく面白いです。
これの為だけに購入しても良いぐらい出来の良い作品です。

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