住野よる『また、同じ夢を見ていた』感想。キミスイよりも好きです。

今回は住野よるさんの『また、同じ夢を見ていた』の感想です。

また、同じ夢を見ていた

デビュー作『君の膵臓をたべたい』は大ヒットとなりました。ヒット作後の第一作なので、作者の真の実力が問われるところでしたが、果たして。

※8/13 音声原稿追加しました。別考察をしていますのでよかったらお聴きください。文字にしてないので読書感想文の参考にもなるかも?笑

冒頭からタイトル間違えています、すみません(´・ω・`)

あらすじ。

「幸せとはなにか?」というのは学校の授業での発表テーマであり、

作品は小学生高学年の”私”が出会った様々な人を通じ、「幸せ」の姿を追求していく形になっています。

放課後、母が帰宅するまでの時間に、猫の”彼女”と、

”アバズレさん”と呼んでいるお姉さん、”南さん”と呼んでいる高校生、

そして一人暮らしのおばあちゃんのいるところを巡り、そんなお友達たちとお話をします。

自分より年上のお友達たちとの会話の中でいろいろな気づきに出会い、成長してゆくお話。

時期としては3ヶ月ほどの短い季節を切り取ったものです。

少々荒削りですが、良い

ストーリーとしては少々荒削りになっているようにも思いますが、全体の流れとしては素晴らしい。生死という根源的なものに直に触れる前作とはまたちがう、しみじみとした感動が訪れる作品になっています。

南さんの登場のさせ方が作品としての複雑性を持たせるのに功を奏しており上手いなと思います。

荒削りと書いたのは、後から明るみになる事実から遡っていけば、「私」が名前を明かしていなかったなどの設定はちょっと無理じゃないかな、と思う点です。

ネタバレになってしまうのは勿体ないので、あまり書けませんが、本来であればもっと早くその結論に至ったとしても不思議ではなかったのではないか? と感じることもあります。

本作では桐生君のお父さんは結局何であったのかという問題も明らかにされないまま幕が引かれますが、ある程度謎が残った幕引きもありなのではないか、という気がします。

個人的には前作とはまた違う魅力がある良い作品になっていると思います。

https://twitter.com/boookmark_/status/701342335863422976

このように深く感銘を受けておられる方もいらっしゃいます。

私も前作よりすてきな小説だと思いました。読み甲斐があるのは間違いないでしょう。

ちょっとした違和感

ここからは大したお話ではありませんが、ちょっとだけ気になったことについて述べさせていただきます。

本作には、『星の王子さま』『白い象の伝説』『トム・ソーヤーの冒険』『ハックルベリー・フィンの冒険』などの作品が会話などで登場します。

特に『星の王子さま』は前作でも登場した小説ですから、住野作品にいくらかの影響を与えているのは確かであると思います。一軒一軒お友達の家を訪ねる本作の主人公は、一つ一つの星を訪ねる「王子さま」に似ているようにも思います

星の王子さま―オリジナル版関係ないですが映画版の感想はこちら

このように、登場する作品が物語形成において重要であるなか、一つ気になる表現がありましたので、それを挙げさせていただきます。

「子どもの頃、漫画の『ピーナッツ』が大好きだった。日本語に訳されたやつをよく読んでて、そこで、主人公のチャーリーが言うんだ。人生とは、アイスクリームみたいなものだって」

(『また、同じ夢を見ていた』P.172)

ここの言葉の置き方が、現実にはまず話されないような言葉遣い、いわゆる「小説調」になっています。

『ピーナッツ』というのは、あのスヌーピーが出てくる漫画の正式なタイトルですが、日本人ではそのことを知っている方は少ないように思われます。

A peanuts book featuring Snoopy (1)関係ないですが映画版の感想はこちら

むしろ日本語版でも『スヌーピー』という売り方をしている作品なので、ここで、”漫画の『ピーナッツ』”および”主人公のチャーリー”と言わせる(作者の)こだわりは果たして必要があったのかが疑問です。

「スヌーピーの漫画が大好きだった。そのなかで、チャーリー・ブラウンがいつも言うんだ。」とかでよかったのではと。

何気ない会話ならよかったのですが、この部分は本作で最も重要な場面の一つであったため、少々引っかかりを覚えてしまいました。

あと本作とは直接関係ないですが、主人公は、『ハックルベリー・フィンの冒険』はすぐ読めるから、といって2~3日くらいで読了してしまいますが、あれって文庫本で本編450ページほどのなかなかの大作でありますから、彼女の活動時間を考えてもそこまで早く読み終えるのは難しいのでは・・・?と思ってしまいますがどうなんでしょう。

登場作品が重要である一方で、その作品群との距離感をつかみかねているのが、少し気がかりです。

(それほど作品の本質に影響はないので、不快に思われたファンの方はすみません。)

作者のつぶやき

作者の住野よるさんはTwitter上で、結構赤裸々な想いが書かれており、興味深いので引用させていただきます。

twitter1

この小説はラノベであるという主張です。なるほど、キミスイが「半月」という私の指摘も中たらずといえど遠からずだったわけですね。

ただ公式発言としてはアリなのかは微妙ですね・・・・・・笑 twitter2

ラストは多義的な解釈もしうる興味深いものとなっています。

ラスト一文は、○○○○で。

結び

途中、「パシャパシャ携帯で写真を撮る」といった表現が出てきましたが、これはどちらかといえばガラケー時代での表現ですから、この作品も着想は「キミスイ」と同年代(つまり2000年アタマ)だと思われます。

作者も上記ツイッターでラノベ大賞狙いで書いた、とありますから、過去作のストックであることは間違いありません。

つまり『キミスイ』と『また、同じ夢を見た』はどちらを先に小説として出版してもおかしくはなかったのでしょう。

そこで前作でタイトルと大々的広告で人目を奪って、内容勝負を二作目にもってくる、という戦略をとった。

これはなかなか上手いですね。作家のキャリア形成からして大変有効的に働いているような気がします。

ただ気になるのは「売れれば勝ち」の世界ですから、出版社としては第一作でその目的を果たしたとも言えます。

「トム・ソーヤー」より「ハック・フィン」がおもしろいというのは僕もずっと思っていることでありましたが、同世代でそのような考えをもつ人はあまり聞いたことがなく、僕個人として親近感が沸く作家様です。

前作では売れているからこそ結構辛辣な評価になりましたが、出版社の使い捨てにならないように、今後とも頑張ってほしいところです。

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【趣味】読書を趣味にして3年ほど経ったんだが…
1: 名無しさん@おーぷん 2018/05/17(木)20:07:54 ID:cJf 色々雑学付くし割と楽しい 以下、反応 2: 名無しさん@おーぷん 2018/05/17(木)20:08:26 ID:XoH 良いことと思う   3: 名無しさん@おーぷん 2018/05/17(木)20:09:38 ID:zV6 何読んでるの?   4: 名無しさん@おーぷん 2018/05/17(木)20:10:24 ID:cJf >>3 メインは科学分野の雑学本。いわゆるポピュラーサイエンス。   5: 名無しさん@おーぷん 2018/05/17(木)20:10:54 ID:FHb >>4 俺も読書好きだけど 歴史系ばっかだわ   9: 名無しさん@おーぷん 2018/05/17(木)20:14:31 ID:zV6 >>4 俺も科学書や哲学書はよく読むよ 高校時代には リチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」 トマス・クーンの「科学革命の構造」 ルネ

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