くらの先生の『さんさん桜』(第1巻)の感想です。
くらの先生にとっての初単行本作品とのことです。
作品紹介
日本舞踊に魅せられた2人の青春成長物語!
日本舞踊の名家に生まれたが父の死をきっかけに舞台を降りた菊央。
そんななか、突然日本舞踊を習いに家にやってきた金髪碧眼のヒメ。
そんなヒメに振り回されながら菊央も、再び踊る決意をする――!
父の死をきっかけに日本舞踊を辞めてしまい怠惰な毎日を過ごしていた菊央と、そんな菊央の家に金髪碧眼で容姿端麗なヒメがやってきたことから物語が始まります。
感想
トラウマを乗り越える物語と、日本舞踊
菊央は、自分のせいで父親を殺してしまったと感じており、その為に非常に日本舞踊に対してトラウマを抱いています。
日本舞踊を教えて欲しいヒメと出会ったことにより、強制的にトラウマと向き合わされてしまう菊央。
ページ数にしてしまえば短く描かれており、さらっと流したように見えるのですが、向き合った結果立ち直った感じが非常に出ており、良かったと思いました。
本編の流れに大事なところはしっかりと描きつつも、読者に対しての日本舞踊の説明としては、飛ばせる細かいところや、が横筋に逸れてしまいそうな箇所は結構バッサリと捨てている感じです。
日本舞踊を題材にしていますが、この「日本舞踊の説明」に執着しすぎずに、それでいて説明と描写は必要十分に盛り込まれていると感じました。
日本舞踏を題材に置きつつも二人の成長にも重きを置いているところが本作の特徴
私自身、この作品を読むまでは日本舞踊というモノに対してほとんど知識を持ち合わせてはいなかったのですが、読んでいて説明が長い・多いなと感じることも、逆にわからなくて何かに詰まる、ということは全くありませんでした。
今作が初連載で初単行本作品なようですが、物語の必要な部分を取捨選択するのが非常に上手い作者なんだろうな、と思いました。
ヒロイン(?)の謎と物語性
ヒロイン然として物語の動きの中核を担っているヒメですが、謎がかなり多い存在。
敢えて隠してる部分なのですが、本名が分からないのはまだいいとしても、下手したらヒロインですらなさそうな。
性別は明記されておらず、ヒメ自身も特に言っておらず、また名前もわからないので、そこからも判断できない状況。
この「敢えて隠している」のかは、今後わかるのかと思いますが、なかなかモヤモヤとさせてくれます。
いずれにせよ、基本的には好奇心旺盛で天真爛漫な小動物的な言動でありながらも、意外と人を見ている感じがするヒメは可愛いの一言。
本当に女の子であっても、実は男の子であっても、この物語のヒロインは間違いなくヒメなんだよ!って思わせてくれます。
結びに
日本舞踊を通じて過去のトラウマに打ち勝ったり、二人の若者が互いに成長していく姿を描いた今作。
成長物語としても、日本舞踊を題材にした作品としても、なかなかに優秀だと感じました。
第1巻の最後には衝撃的な部分もあり、物語が一気に動きそうな予感がします。
読み応え十分な作品です。
俺からは以上です。
KADOKAWA (2018-11-14)
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