【民法】錯誤無効はどうして難しいの?お馬さんから覚える動機の錯誤【錯誤無効①】

※本稿は一般/公務員試験/行政書士試験向けに平易化して説明した文章です。専門性・正確性を保証するものではございませんので、ご留意ください。

錯誤無効=法律行為の要素の錯誤は無効

B子:うえ~ん、錯誤無効の法律の意味がほとんどわからないよ~

C子:ものすごく大事な条文なのに、ややこしすぎますね。

A子:そうですよね。「錯誤無効」とさっくり片づけてしまうと簡単なのに、それがどういう条件で適用できるか、…と考えると一般の人にはなじみにくいかもしれません。

ということで、今回は、この「錯誤無効」について、少し考えてみたいと思います。

まずは民法の95条を見ましょう。

第95条

意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

B子:あーこれこれ!要素に錯誤とか、表意者がどうとか、日本語が難しいのよ!

C子:実は錯誤無効という通称がややこしくしているのかもしれませんね。素直に「(法律)行為の要素による錯誤は無効」とかのほうがいいのではないでしょうか。

A子:そうですね。法律上の「要素」に当たるか否かが裁判では争点になりますから、錯誤無効だけで覚えていると、時に、「要素って何? 」となりかねませんね。

B子:あーちょっとまって、その前に「錯誤」っていうところから始めてよ!

A子:そうですね。「錯誤」というのは、原則としては、自分の内心と行動が一致していない状況のことを言います。要するに”本当の自分ではない状態”とか言う感じですかね。

B子:ピーターパン・シンドロームみたいだ!

違うか!

C子:……えーと、具体的には、本当はセレロン(Celeron)のCPUがほしかったのに、何をとち狂ったのかアスロン(Athlon)CPUを頼んでしまったとか(´・ω・`)!?

A子:む、AMD派の私を敵に回したな(`・ω・´)!……

いや、まさにそういうことですね。まあ要は”勘違い”とでもいいましょうか。それがオーソドックスな「要素に錯誤は無効」の例になります。

動機の錯誤

A子:ただこの、要素の錯誤無効を考えるうえで一番ネックなのは、見た目上普通の判断をしているけれど、内心の動機が異なる場合なんですね。

この類型は「動機の錯誤」といいます。

B子:うーん、全くわからん!

A子:はい。わかりませんよね。一つの例としては、受胎馬錯誤事件が有名です。

B子:あ、それなら知ってる!ディープ産駒だから強いだろうと思って買ったけど弱かったから裁判したやつだよね!

C子:さすが競馬ファンだけありますね…しかもあながち的外れでもないという(´・ω・`)

A子:えー、ストーリーとしてはこうです。戦績のよい13歳の牝馬がいました。種付けを行い、受胎したようです。そこで売り手は「この馬を買いませんか?受胎していますよ」と言って売ろうとしました。
(「買い主」だと「飼い主」と表現が混合するので、「買い手」「売り手」と表現します)

買い手は、「おお、血統的に強い馬が生まれるぞ」と思い牝馬単体の値段より高値で買いました。しかしその馬は弱かったと。

そこでこれは錯誤無効だと裁判し、買い手の言い分が通ったわけです。

B子:うーーー? そりゃ強かったり弱かったりするでしょ、と思うよね。

C子:それはそうなんですけど、受胎する馬の分も見込んで高く買っちゃった、というところがあるんですよね、確か。

A子:そうなんです。あくまで販売の見た目上は”牝馬一頭”だったというところがポイントです。

B子:なるほど、でも買う方としては、競走馬として活躍する仔馬の期待料を上乗せするのは無理もない話だね…!

A子:そうです。ここで売り手と買い手の立場を、ざっくりと整理してみましょう。

馬の売り手:この優秀な牝馬1頭をを売るだけだぞ(チラッ)、ただ受胎はしているぞ(チラッ)

馬の買い手:承知した(生まれる仔馬も駿馬に違いない!買うぞ!)

ちなみに買い手は、()内のことについては、相手に伝えていません。

B子:伝えていないなら、買い手も意思疎通してない気がするけどね。

C子:とはいえ、売り手も産駒込みでの価格で売ろうと思ってるのも間違いない話です。

A子:そうですね。ここで判例の趣旨をいいますと、

「物の性状につき、表意者が意思表示の内容とし、取引の観念、事物の常況からみて意思表示の主要部分をなす程度と認められるときは、法律行為の要素となる」

となっています。

B子:うーん・・・・???

C子:「意思表示の内容」=「仔馬の活躍に期待を寄せ購入すること」「意思表示」=「牝馬(母馬)を購入すること」と置き換えてみてはいかがでしょう。

B子:えーーと、「購入者が仔馬の活躍に期待を寄せ購入することとし、取引の観念…などからみて、牝馬を購入することの主要部分をなす程度と認められるときは、法律行為の要素となる」‥‥おおお!!

A子:そうです。表向きの購入物と、それを購入する動機が異なっていても、それは要素による錯誤で無効になる、ということです。これが”動機の錯誤”です。

B子:うーん、でも…”思てたんと違う!”とかなったら、なんでもかんでも無効にできるよね。この馬のケースも、売り手は種付け料などが発生してるわけだから、ただただ損のような……

A子:そこで後段の但し書きがきいてくるわけですよね。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない」と。

C子:”重大な過失”というのも、結構表意者有利ではある気もしますが……このお馬さんの判例も感情では納得するのは難しいかもですね(´・ω・`)

A子:結構判例主義なところはありますね。逆に言えば、判例が出ていなければ、売り手はやりたい放題、みたいなところはあるかもしれません。

C子:最近で言えばソーシャルゲームのガチャ問題も、「意思表示の内容」=「表記された出現率に則り、特定のキャラクターを入手しようとすること」で、「意思表示」=「魔法石を購入すること」と読み替えると、錯誤無効などにあたるとも解釈できます。

「購入者が表記された出現率に則り、特定のキャラクターを入手しようとすることし、取引の観念…などからみて、魔法石を購入することの主要部分をなす程度と認められるときは、法律行為の要素となる」

A子:運営側が、出現率が表示とは異なる数値に操作したり、誤設定していたり、あるいは明らかに誤認させるような表記内容だったりしたら、ユーザーにより有利になりますね。もっとも詐欺に問われる可能性も高いですが。本件に関連する裁判は、これから始まりそうなので、その進展次第といったところでしょう。

B子:うーん、馬の事例よりは納得できる気がするけど、一筋縄ではいかないのか……

例題

A子:それでは、以上を踏まえて例題を出してみたいと思います。

動機の錯誤は、表意者が相手方にその動機を意思表示の内容に加えるものとして明示的に表示したとき以外は要素の錯誤となることはない

○でしょうか、×でしょうか?

B子:げっ、日本語が難しい…

A子:設問では言葉の表現が問題が意地悪なんですよね。無理に難しくしようとしているというか…なので、書き直してみたりするとわかりやすいかもしれません。

こういう時は、

動機の錯誤は、表意者が相手方にその動機を意思表示の内容に加えるものとして明示的に表示したとき以外はっきり示さなかったときは要素の錯誤となることはないならない

と言い換えたらどうでしょう。

B:動機を意思表示としてはっきり示さなかった時は要素の錯誤とならないかどうか、という問題か…日本語は理解できたぞ……

C子:あとはお馬さんの例を思い出すだけでしょうか?

B子:うーんっと、内心で仔馬の活躍を見越して購入していたのが要素の錯誤になっていたんだよね…動機を相手に示してなくても無効になっていた、ということはこの問題は×なのか!

A子:正解! 一つの事例を掘り下げておくと、わかるようになるでしょ!?

B子:感動!! でも設問がめちゃくちゃ意地悪な日本語を使っていることはわかった(´・ω・`)!!

錯誤無効→錯誤取消へ

A子:ところで、実は民法改正案では、錯誤無効という概念は消滅しています。錯誤は取り消し可、という、大幅な改正になる可能性があります。

B子:えーーーショック! ……いや、つまり覚えても無駄ということになるか!わーい

C子:それが残念なことに、もともとたった二文だったのが第四項まで増えるので、覚える方にとっては面倒かもですよ。

B子:しょぼーん(´・ω・`)

まとめ

A子:ということで今回は民法95条の”錯誤無効”、「要素の錯誤の無効」について、お話しました。

動機の錯誤、と聞いたら、あの仔馬のことを想いましょう…

C子:村○春樹風ですね。。ざっくりいうと、お母さん=意思表示 子供への期待=意思表示の内容 ですか。

B子:おおっ、覚えられそうな気がしなかったけど、めっちゃ覚えられそう!

「お母さんを買う理由が普通に考えて子供にあるのがごもっともだとしたら、それは法律行為の要素になる」

C子:な、なんか悲しくなる表現…(´;ω;`)ブワッ

A子:そっ、それでは!

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