『ウケる日記』感想とその技術の考察……って記事にしていいんだろうか……?

今回は水野敬也氏の『ウケる日記』の感想と考察について述べさせていただきたいと思います。

ウケる日記
ウケる日記

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水野氏は知る人ぞ知るクリエーターです。『夢をかなえるゾウ』は原作が大ヒットしたうえ、ドラマ化にもなるという大成功を果たし、一躍出世した方です。

この作品ではアメーバブログで現在も運営中の「ウケる日記」というサイトから珠玉の作品を抜出、あるいは未発表作品などを掲載したものとなっています。

勘違いしていたこと

思い違いをしていたのですが、『夢をかなえるゾウ』の印象が強かったので、これは「Howto本である」と思い込んでいました。つまり「ウケる日記」の書き方であると。

しかし内容はかなりエンタメ性を追求した日記そのものでした。若干がっかりしたのですが、この珠玉の作品群にこそ文章(ブログ)の書き方のエッセンスが詰まっているように感じられました。

※あとで気づいたのですが『ウケる技術』という著書がより解説的になっているようです。

試合の醍醐味は逆転HRにあり?

タイムリーな話ですが、プレミア12の試合でも、日本が勝ちすぎているとどうにも面白くなく感じてしまいます。

例えば一次予選のアメリカ戦。序盤では2点リードを許しましたが蓋を開けてみれば、日本が10点ももぎ取り10-2という圧勝という結果になりました。

10点目はSB松田宣浩選手の満塁ホームランであり、試合を決定づけることとなりましたが、如何せんこれは7回表のことです。

もちろん日本としては嬉しい勝利ですし、宿敵アメリカを下すという大変光栄なことではありますが、7回に試合が決まっては、試合内容としてはあまり面白くありません。

同じ勝利でも、試合として面白いのは逆転劇が含まれた波乱含みの展開にあるでしょう。序盤で展開が決まるのではなく、終盤でひっくり返るから、野球(だけでなくスポーツは)面白い。

水野氏の著作を見て感じたことは、「9回裏3-5の逆転HRを狙っている」ということです。ダラダラした展開をあえて長引かせて、逆転打を打つ。このような手法が『ウケる日記』には潜んでいます。

水野氏のようなプロライターは、勝負のなんたるか熟知している人間である、そんな感想も浮かんできます。

具体については、以下に説明したいと思います。※いくつかある記事の抜粋です

オ〇ニー事件

まず自己語りから始まり、若干ノリが先行した関西人には苦手な?テイストとなっているのですが、途中からの本展開でいきなり面白くなります。

そしてこの話自体を次の「アメブロ削除事件」の前段としているところにも、構成の素晴らしさを感じます。

アメブロ削除事件

これは「オ〇ニー事件」の記事がアメブロから削除されるという事態を契機として書かれたものです。

途中から内容が胡散臭くなりネタとして読み込むのがめんどくさくなってきます。

がしかし、最後で特大ホームランをぶっこんできます。こればかりは吹き出さざるを得ません。

最大のオチのために二話にまたがり雌伏し続けるスタイル。ここにプロの真髄を見ます。

ポスティング界の島耕作

ポスティングされないように、「チラシ・広告を入れないで! 毎日ゴミにするのが面倒なんです……。 でもこれだけは言わせてください! ポスティングの仕事、お疲れさまっス!」と上手くメッセージを込めた張り紙をしたが、それを上回る手書きのメッセージがポスティングされていたというお話です。

げきれい

ありがとうございます

たまには

ひまつぶしに

ごらんに

なってはどうです

(『ウケる日記』P.96)

この手紙には「営業」のすべてが含まれている、彼は島耕作である!と大絶賛しています。

「共感」と「押し」という営業の真髄がこの短いメッセージには込められていると。

本書では触れられていませんが、おそらくこの改行スタイルと「か」の提案・依頼を意味する終助詞を独立させている点も意味を深めていると思います。

激励ありがとうございます。たまには暇つぶしにご覧になってはどうですか

となると、確かにこれでも意味世界としては秀逸ですが、営業の苦労や泥臭さという背景が不可視化されているようにも思えます。

水野氏が褒めていた「文章の妙」に加え、「現場感」からもすぐれた表現となっており、これは勉強になります。

なお冒頭の水野氏のメッセージは「押し」+「共感」の順番でありあますが、これに対し島耕作氏の手紙は「共感」+「押し」という逆王手を掛けているところにも注目したい点です。

富士急ハイランド事件

ブログ未公開日記のようですが、これは入りの煽りに失敗しているような気がします。

オチは面白いですが、「これは面白いぞ~」と必要以上に煽り立ているような気がするからです。

つまり試合で言うと、「勝ち試合を見ている」気分に陥ってしまいます。

ここが「オ〇ニー事件」「アメブロ削除事件」との違いであり、弱さでもあるかなと思います。

この文章の最後の出費額まとめは、『こち亀』アニメ初期に損害額(損害物でしたっけ?)が最後に示されたのと似ています。

下ネタの伏線を上手く絡めるところは、狙いがスマートだなと思いましたが、冒頭が勿体ない気が。

ところでアニメ初期のこち亀は最後のまとめがあったのが、ものすごく面白かった記憶があるなあ。すぐに無くなってしまったのが残念。

まとめ

  • 最後のオチを意識したらどんな展開でも面白くなる!
  • 営業(文章)のコツは「共感」・「押し」に加えて現場感!?
  • 冒頭にあまり煽りたてないことも大事!?

上記は「ウケる日記」を読んで、「ウケる日記の書き方」について考察を私なりにまとめたものです。プロの文章なのでやはり参考になると言わざるを得ません。

面白い日記に挑戦しようとしている方は、教科書代わりに水野氏のネタを楽しんでみるのもいいかもしれません。

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