『わたしたちはその赤ん坊を応援することにした』(朝倉かすみ)概要・ネタバレ・感想。苦手でした……

今回は朝倉かすみ著『わたしたちはその赤ん坊を応援することにした』のレビューを行います。

わたしたちはその赤ん坊を応援することにした
朝倉 かすみ
幻冬舎
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正直無理だ・・

感想を見ていると概ね好意的な評価が多いですが、私にはどうしてもなじめない類の小説でした。作品が持っている重苦しい雰囲気にどうしても馴染めず、読みきった後も「時間を無駄にした」という思いと胸に去来する鉛のようなしこりが拭えずにいます。

おそらくこれは私自体の好みの問題であるかと思っています。たとえば女流作家の著名どころでは恩田陸作品を私はどうしても苦手としているのですが、世間評は高いという裏腹さに、なんともズレを感じてしまうところであります。

女性ウケはよく男性ウケが悪いと定義していいのか、もともと作品を享受する素養がないのか、それはなんとも言いがたいところです。

表紙・タイトルについて

タイトルについては読了してもあまり意味は分かりませんが、短編集の「森のような、大きな生きもの」「お風呂、晩ごはん、なでしこ」は、スポーツ選手らを応援する視点で書かれたものです。前者は「大いなる視点」で歴史上のスポーツ選手らを捉え、後者は一人の女子社員、フージコさんによるなでしこジャパンの応援について書かれたものです。

他者を応援することで自分を満たそうとする人生は、ある種「借り物の人生」のようなものです。作者はそのことに対する冷笑を発展させ、スポーツ選手、ひいては自分の子供に人生を仮託する人間の思考原理を、表題のようにシニカルに表したとも考えられます。

あるいは、パウロ=コエーリョの「ベロニカは死ぬことにした」という非常にセンセーショナルなタイトルの小説と似ているような気もしますから、単純にそれになぞらえた、というようにも考えられるでしょう。

いずれをもってしても、結果として何が言いたいのか主題がはっきりせず、タイトルと内容のギャップに違和感を覚えたのは私だけではないはずです。

各短編について簡単な評論を交えます。

森のような、大きな生き物

一躍有名になり、世間の目をかっさらったオリンピックのスターたちについて書かれたものです。実名を一切出さないのですが、ある年代以上の方であれば、誰のことを書いているのかは全てわかります。しかしこれを書いている視点は一体誰なのか、そういう正体が一切表れない点に「気味の悪さ」を感じます。

ニオイスミレ

近未来SFのような話です。優生思想が強く、優れた男性の種を残すことが価値であるとみなされる世の中に生きる女性たちの姿。しかしSFとしては設定がガバガバで面白いとは言いがたかったです。

P.45「彼女たちは『いしおんな』と呼ばれる。いしあたま同様、融通のきかない、頑固者という意味だ。わたしのように、さしたる理由もなく産もうとしない女も、『いしおんな』に入ってしまう。むかしはそこそこ数もいて、ある程度は市民権を得ていたらしいのだが、富国多産政策のもとでは少数派だった。」

「いしおんな」という定義や富国多産という言葉遊び。上記表現にどうしても違和感を覚えました。特に前者は石女(うまずめ)という言葉をご存知ないのか、いやまさかそんなことはないだろうとか、逡巡してしまいます。

まだ短編集の冒頭ですが、ここらへんで作者は大丈夫だろうかと若干心配になってきます。

あなたがいなくなってはいけない

チョピンと呼称している、本名も知らない友人を呼びつけておいて、自分の心情話を吐露し同情を得、逆にチョピンの不倫話を聞けば近所にばらまくという鬼畜ぶりを見せる、そんな女性の半生を描く作品。

彼女の行為が鬼畜なのかそうでないのか、あるいは男女で解釈違いがあるかもしれません。むしろ女性の「あるある」なのでしょうか・・??

地元裁判

夏の庭」かなと思ったらそうじゃなかった。

相談

珍しく男性主人公のお話です。しかしなんだろう、上司が部下の社内恋愛に嫉妬するという器の小ささに驚き。

ここまでで思ったんですが、この作品群は、2chの生活版でまとめられるたネタから着想を得ていたりするんじゃないかなあ。。

ムス子

真実を告げられ、「あっ……そうだったんだ」と途中から男のマインドが曇ってくる話の構成は先の「相談」と似ていなくもないです。

「男の幼稚さについて描いた2作品」だったのかもしれません。

フージコさん

ある意味では、標準的かそれ以下の働く女性モデルとなったお話です。

「キャリア・ウーマン」という呼称だけがかっこよくなっていく中で、蓋を開ければフージコさんのような現実が待っている。彼女を応援したくなるような共感作の仕上がりになっていることでしょう。

冒頭でも述べましたが、この作品は、主人公フージコさんが、今からなでしこジャパンを応援する――というところで終わります。結びはこうです。

P.222「今夜の相手は格下だけど、油断は禁物。フージコさんはきもちをぐっと引き締めて、アパートの鍵を開けた。」

若干過剰気味に自分を重ねて仮託しているようにも思います。冒頭に申しましたように、こういった人生モデルに対する皮肉というのが表題『わたしたちはその赤ん坊を応援することにした』につながっているようにも感じます。

点数:★★☆☆☆

好きな人には良いかもしれません。そもそも冒頭の作品も10代の方にはモデルになる人物は分からないでしょうし、より人を選ぶ作品になることでしょう。

以上です。


 

ベロニカは死ぬことにした (角川文庫)
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私はあえて一つの説を提唱したい。『けものフレンズ』の原型は『明日のナージャ』であると。 けもフレの魅力はサーバルやかばんちゃんそれ自体にあるわけでなく、それをとりまく仲間や環境、そして彼らの葛藤などに触れていきながら、最後に世界が内包していた問題に触れるというところだ。 さて、『明日のナージャ』はどうだろうか。ナージャ自体に魅力があるというにはさすがに幼すぎる。『ナージャ』を愛する者たちは、ナージャを取り巻く世界を愛しているのである。孤独なピアニスト、吟遊詩人、マタドールとフラメンコ‥‥そういった、”教科書には乗らない”人々の生き様に視聴者は感銘を受けたのである。 ナージャシリーズと細田守との関係性には詳しくないが、少なくともこの細田アニメが『時をかける少女』を生んで、それが新海誠の『君の名は。』を生むことになった。 そしてナージャの精神を正統的に受け継いだ作品が『けものフレンズ』。ケモナー細田もにっこり‥‥かどうかはわからないが、間違いなく言えることは、今は流行っているメディアはすべて細田守の頭の中に存在していたということだ。 逆に当人の作品は時代を先駆

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